
「…あれ」 久し振りに帰ってきた家。けれども無愛想ながらもいつも出迎えてくれる同居人の姿は無く、デュオは 少し寂しさを感じる。だが家の中に入ると何やらバスルームの方から音が聞こえてくるので、どうやら彼 はシャワーを浴びているらしかった。リビングに入るとソファーの上に荷物が置きっぱなしにしてあり、彼は 帰ってきてすぐにシャワーを浴びに行ったようである。デュオも使いたかったのだが、彼が使っているのなら 仕方ない。キッチンに行きインスタントコーヒーを作ると、その疲れた体を休めるようにソファーへと深く体 を預けた。
「デュオ…」 「…ん」 低く心地良い声に意識が浮上する。どうやらそのまま眠ってしまっていたらしい。ゆっくりと目を開ける と、目の前には懐かしささえ感じるプルシアンブルーの瞳があった。 「…オカエリ、ヒイロ」 「…おかえり、デュオ」 1ヶ月振りの再会。お互い仕事の関係で随分と家を空けていたのだ。デュオが目を閉じると、唇に優 しい感触が落ちてきた。1度目は軽く、2度目は少しだけ強く。感触が遠のくと、デュオはゆっくりと目を 開けて心地良さそうに笑った。 「良い匂いがする」 「シャワーを浴びていたからな」 言うと、ヒイロはまだ濡れている髪の毛を邪魔そうに両手で掻きあげた。雫がポタポタとヒイロの手や 顔を伝う。 「…、…」 「何だ」 あまりにもじっ…と自分を見つめるデュオに、さすがにヒイロは居心地の悪さを感じて眉を顰める。だが デュオはヒイロの問いには答えずに手招きをする。内心首を傾げながらももちろん表情には出さず、ヒイ ロは手招きされるままにデュオに近付く。すると、デュオが手を伸ばしてきてヒイロの顔を引き寄せると、滴 る雫の一筋をいきなりペロリと舐めたのだ。 「…!?」 今度こそ僅かながらも表情に出してまで驚くヒイロを無理矢理押さえつけ、その他の雫もゆっくりと舐 めとっていく。 「おい…」 不可解なデュオの行動に、それでも振り払う事はせずにヒイロは目線だけをデュオへと向けた。すると 漸くデュオもヒイロを解放して悪戯っぽく笑ってみせた。 「…だって舐めたくなったんだもん」 何が「だって」なのかがさっぱり分からず、ヒイロは深々と溜め息をついた。 「何だそれは」 「ヒイロ色っぽいから」 は?と。一瞬何を言われたか分からず固まってしまったヒイロにデュオは続ける。 「久し振りに会った途端、そんな色っぽいトコ見せられたから我慢出来なかったんだ」 全く悪びれた様子などなく、さも当然のように言うデュオに、ヒイロは暫し絶句していたが、やがてもう 1度ゆっくりと髪を掻きあげるとクスリと笑った。 「…誘ってるのか」 「違う、誘われてんの」 ニッコリと笑い両手をヒイロへと伸ばす。先を促すその仕草に、ヒイロはソファーに座るデュオへと覆い被 さる。そのまま顔や首筋にキスを落としていくと、まだ濡れているヒイロの髪が素肌を滑りデュオがくすぐっ たそうに身を捩る。 「あーぁ、オレシャワー浴びてないのに」 「誘ったのはお前だ」 「だからオレはお前に誘われたの!」 もぅ、この自覚ナシの色男め。 そんなコトを呟いて、それでもデュオは久し振りのその感覚に身を任せていった。
「そうか」 「?」 目を開けると、再びシャワーを浴びてきたらしいヒイロがミネラルウォーターを喉に流しこみながら何やら 呟く。ベッドから身を起こしたデュオが不思議そうに首を傾げると、ヒイロはミネラルウォーターをデュオへと 手渡しながらベッドへと座る。デュオもそれを口に含んで喉の渇きを癒しながら、続きを促すように目線 をヒイロへと向けると、ヒイロはちょっとタチを悪そうな笑みを浮かべた。 「俺に色気とやらがあれば良いんだな」 「は?」 「そうすれば、お前から誘ってくるんだろう?」 「……」 …何か、違う気がする。 だが、そう言って自分に薄く笑みを向けるヒイロは壮絶に艶っぽくて。デュオはちょっと顔を赤くしながら そっぽを向いた。 「冗談、コレ以上はオレの身が持たないもん」 コレ以上ドキドキさせられたら、本当に心臓がどうにかなってしまいそうだ。 そっぽを向いたままこちらを見ようともしないデュオに、ヒイロは態とデュオの耳元で優しく呟いた。 「デュオ」 「〜〜っ」 ちょっと掠れた低い吐息混じりの声に、漸くこちらを向いたデュオは、顔は赤いままに観念したようにヒ イロを見た。 「…おま…っソレ反則!!」 「何がだ?」 分かっているクセに。こうなるとヒイロはとことんタチが悪い。態と意識してデュオを煽るようなコトばかり をするのだ。こうなったらもぅ自分が観念するしかない。まぁ、惚れた弱みってヤツだ。 「…あぁ〜もぅっ!!手加減しろよっ」 「お前次第だな」 ヒイロにとっては、何よりもデュオのその姿こそが自分を魅了するのだから。 そう言って少し笑うヒイロはやっぱり綺麗で。そんなヒイロにそんなコト言われてしまったら… もぅダメかも、とデュオは思った。
END. |
…なーにーコーレー。。。